相続財産が不動産のみである場合にも遺留分侵害額請求ができます!

相続財産が不動産のみであり、預貯金がほとんどない場合、遺留分侵害額請求ができないと思っている方もいらっしゃいますが、そんなことはありません。
相続財産が不動産のみである場合の遺留分侵害額請求についてご説明します。
相続人には遺留分があります
相続人は、亡くなられた方の遺産について、遺留分を持っています。遺留分とは、遺産の最低保障の取り分ともいうべきものです。
亡くなられた方が、生前に、遺言書を書いており、相続人のうち、誰か一人にすべての遺産を相続させようとしても、上記の遺留分を侵害することはできません。
遺留分を持つ相続人は、遺留分を侵害している相続人などに対し、遺留分侵害額請求を行い、ご自身の遺留分を確保することができます。
各相続人の遺留分の割合については、以下のとおりです。
1 相続人が、①配偶者のみ、②配偶者と子、③配偶者と直系尊属、④子のみの場合
1/2×各自の法定相続分
2 相続人が、直系尊属のみの場合
1/3×各自の法定相続分
不動産を相続人の一人が相続した場合でも、遺留分侵害額請求はできます
相続人の一人に対し、不動産を相続させる遺言書が見つかった場合で、相続財産が不動産のみである場合、他の相続人の中には、自分は何ももらえないとショックを受け、そのまま諦める方もいらっしゃいます。
他の相続人の中には、自分が取り分を要求することで、不動産を取得した相続人に迷惑がかかるのではないかと懸念される方もいらっしゃいます。
しかし、遺留分制度が設けられたのは、相続人間の不公平感を緩和するとともに、残された相続人が生活に困ることがないようにするためでもあります。
上記のとおり、遺留分は最低保障のようなものですので、遺留分侵害額請求をするのに遠慮はいりませんし、相続財産を単独で取得し、相続人間の公平を害している相続人に対して過度に配慮する必要もないといえます。
不動産を取得した相続人に対する遺留分侵害額請求をした場合、不動産の評価額が基準になります
不動産を単独取得した相続人に対して遺留分侵害額請求をした場合、不動産の評価額を基準にして遺留分侵害額を計算します。
例えば、父は既に亡くなっており、今般、母が亡くなり、兄弟2人が相続人である場合を想定します。
母の相続財産が評価額5000万円の不動産のみであり、兄が、その不動産を、母の遺言により、単独で取得したとします。
弟が、兄に対して、遺留分侵害額請求をすると、弟の遺留分割合は、4分の1ですから、兄に対し、1250万円の支払いを請求することができます。
遺留分侵害額請求には、時効があります
遺留分侵害額請求権には、厳しい期間制限があり、遺留分権利者が、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から1年で消滅時効が完成してしまうほか、相続開始の時から10年が経過しても消滅してしまいます。
そのため、遺言書や贈与により、ご自身の遺留分が侵害されていないかどうかについて、速やかに調査したうえで、遺留分侵害額請求を行う必要があります。
相続財産が不動産のみであり、遺言により、何も取得できなかったとしても諦める必要はありません
相続不動産の評価額について、様々なものがあり、適正な評価額を判定するためには、専門家の協力を得る必要がある場面も少なくありません。
遺言書が発見され、ご自身の遺留分が侵害されていることがわかり、どれくらいの遺留分侵害額請求ができるか知りたいと思われたら、お早めに弁護士に相談されることをお勧めします。