長男のみに相続させる遺言書がある場合でも諦める必要はありません!遺留分侵害額請求が可能です。
これまでご相談をいただく中で、亡くなられた方が長男のみに相続させる遺言書を作成している場合でも、他の相続人には遺留分があることをご存じでない方が多いという印象を持ちました。
相続人には遺留分があります
相続人は、亡くなられた方の遺産について、遺留分を持っています。遺留分とは、遺産の最低保障の取り分ともいうべきものです。
亡くなられた方が、生前に、遺言書を書いており、相続人のうち、誰か一人にすべての遺産を相続させようとしても、上記の遺留分を侵害することはできません。
遺留分を持つ相続人は、遺留分を侵害している相続人などに対し、遺留分侵害額請求を行い、ご自身の遺留分を確保することができます。
遺言者本人ですら、侵害することが許されないという意味で、最低保障といえるのです。
遺留分の割合はどれくらい?
各相続人の遺留分の割合については、以下のとおりです。
1 相続人が、①配偶者のみ、②配偶者と子、③配偶者と直系尊属、④子のみの場合
1/2×各自の法定相続分
2 相続人が、直系尊属のみの場合
1/3×各自の法定相続分
例えば、相続人が、妻と子2人の場合、妻の遺留分割合は、1/2×1/2=1/4、子2人の遺留分割合は、それぞれ、1/2×1/4=1/8となります。
つまり、妻は、概ね遺産の1/4、子は、それぞれ、概ね遺産の1/8について、最低限の取り分があることになります。
遺留分を守るには?
遺留分侵害額請求権には、厳しい期間制限があり、遺留分権利者が、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から1年で消滅時効が完成してしまうほか(なお、消滅時効につきましては、当事務所ホームページのコラム「借金の消滅時効とは?」をご参照ください。)、相続開始の時から10年が経過しても消滅してしまいます。
そのため、遺言書や贈与により、ご自身の遺留分が侵害されていないかどうかにつき、速やかに調査したうえで、遺留分侵害額請求を行う必要があります。
遺言書があっても諦めないでください
今でも、すべての遺産を長男に相続させるという遺言書が発見されることがよくあります。
その場合、遺産を相続できない相続人は、遺留分を侵害されている可能性が高いといえます。
相続人の一人が、相続開始前10年間に、多額の生前贈与を受けている場合も同様です。
遺留分をお持ちの方は、遺留分侵害額請求を行い、ご自身の最低限の取り分を確保することができますので、「遺言書があるから・・・」などと諦める必要はありません。
実際の遺留分侵害額の計算は複雑ですので、遺留分を侵害されている可能性がある方は、お早めに弁護士にご相談ください。